こちらの記事ははちみつのパンが膨らまない原因と対処法についてお伝えする記事です。
パン作りで砂糖の代わりにはちみつを使ってみたけれど、パンが思ったように膨らまなかった・・・というお悩みを耳にします。

ベタベタするし膨らまないし・・大変!でした
はちみつ入りのパンが膨らまなかったりべた付いたりするのは明確な原因がありますし、勿論対処法もありますよ。
はちみつ入りのパンを実際に焼いて膨らみ方を検証しましたので、詳しく見ていきましょう。
パン作り歴27年パン教室を主宰して17年の私が、はちみつ入りのパンが膨らまない原因と対処法についてわかりやすくお伝えします。
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はちみつのパンは膨らまないかの実験
はちみつ入りのパンがどれくらい膨らまないのか実際に焼いて確認してみましょう。
はちみつは約80%が糖分、残りの20%が水分です。
よってはちみつパンを作る時に、パンのレシピの砂糖の重さをそのままはちみつに置き換えただけでは全体的な水分が多すぎてしまいます。
はちみつの重さの20%分の水分を減らすという水分調整が必要です。

私は水分を変えませんでした・・
水分調整をしない、というのがはちみつパンがべた付く原因なのです。
水分調整を忘れずにしてくださいね。
また、はちみつを砂糖の糖分量と同じにするためには、「はちみつの分量÷80%」で換算してはちみつの分量を増やす必要があるのです。
はちみつは砂糖より甘いのではちみつを減す必要があるという考え方もありますが、甘味の感度は人それぞれなので今回は糖分量を合わせることにします。
それでは、はちみつ入りのパンを焼いてみましょう。
はちみつ(12.5%)と砂糖(10%)のパンの比較実験~レシピの配合
次のレシピで食パンを焼いて、はちみつのパンが膨らむかどうかを調べてみましょう。
はちみつのパンが膨らんだかどうかは同時に砂糖のパンを焼いて比較してみます。
(単位:ベーカーズ%)
砂糖のパン | はちみつのパン | |
強力粉 | 100 | 100 |
イースト | 1 | 1 |
砂糖 | 10 | 0 |
はちみつ | 0 | 10÷80%=12.5 ※1 |
水 | 67 | 67―12.5×20%=64.5 ※2 |
無塩バター | 7 | 7 |
- ※1 はちみつは80%が糖分なので、砂糖と同じ甘さに調整するために、はちみつの分量を調整
- ※2 はちみつの20%は水分なのでその分の水を調整
一次発酵
砂糖10%はちみつ12.5%のパンの一次発酵は次のような結果になりました。


はちみつの方が砂糖より少し膨らんでる!
そうなのです。
はちみつが12.5%くらいですとパンの一次発酵は砂糖よりも膨らむスピードが速いのです。
これは砂糖とはちみつがイーストのエサにされるスピードの違いにあります。
イーストは発酵の時にエサが必要です

そしてイーストは単糖類しかエサにできません。
砂糖はブドウ糖と果糖が合体してできた二糖類の「ショ糖」で、これをバラバラの単糖類にしないとイーストのエサになれません。

砂糖はエサになるのに時間がかかるのね

一方はちみつはブドウ糖と果糖が最初からバラバラになっている単糖類でイーストはすぐにエサにして栄養を取り込めるので、発酵が早く進むのです。

はちみつはすぐエサになれるのね
だからはちみつは発酵が始まるのが早いのです。
ではこのまま分割、ベンチタイムに進み二次発酵に入りましょう。
二次発酵
砂糖10%はちみつ12.5%のパンの二次発酵の結果は次のようになりました。


砂糖もはちみつもほぼ同じ!
そうですね、砂糖のパンの発酵がはちみつのパンに追いついてほぼ同じ大きさになりました。
ではこのまま焼いてみましょう。
焼成
砂糖10%はちみつ12.5%のパンの焼成の結果は次のようになりました。

上の画像からわかるのは次の2点です。
①焼き色
はちみつパンの方が砂糖のパンより色が強くついてこんがりするのは、それぞれの糖のメイラード反応のスピードの違いによるものです。

メイラード反応ってなんですか?
メイラード反応は、加熱すると焼き色が付く反応のことです。
上白糖は160℃で、はちみつは110℃でメイラード反応が起きるので、はちみつパンの方が早く焼き色が付きだします。
②膨らみ
12.5%くらいのはちみつでしたら、水分調整をすればはちみつのパンはしっかりと膨らむのです。

私のはちみつパンはなぜ膨らまなかったんでしょうか?
では次にはちみつパンが膨らまない原因について考察してみましょう。
はちみつのパンが膨らまない原因
はちみつパンが膨らまない原因は、はちみつの分量が多すぎることにあります。
はちみつが多いと浸透圧の関係でパンは膨らみにくくなるのです。
では、それを確認するためにパンを焼いてみましょう。
はちみつ(12.5%)とはちみつ(25%)のパンの比較実験~レシピの配合
次のような配合で3本のパンを焼いて比較してみましょう。
砂糖10% | はちみつ12.5% | はちみつ25% | |
強力粉 | 100 | 100 | 100 |
イースト | 1.2 | 1.2 | 1.2 |
塩 | 2 | 2 | 2 |
砂糖 | 10 | 0 | 0 |
はちみつ | 0 | 12.5 ※1 | 25 |
水 | 67 | 67ー12.5×20%=64.5※2 | ※67-25×20%=62※2 |
無塩バター | 7 | 7 | 7 |
はちみつは12.5%のものと25%のものを用意しました。
砂糖のパンははちみつと比較するために参考として焼きます。
- ※1 はちみつは80%が糖分なので、砂糖と同じ甘さに調整するために、はちみつの分量を調整
- ※2 はちみつの20%は水分なのでその分の水を調整
一次発酵
砂糖10%・はちみつ12.5%・はちみつ25%のパンの一次発酵の結果は次の通りです。

砂糖10%とはちみつ12.5%のパンの一次発酵は順調に進みましたが、はちみつ25%のパンはあまり膨らみません。

私が焼いたはちみつパンは25%です・・・
はちみつの分量が10%くらいですと発酵は順調に進むのですが、20%くらいになるとはちみつが発酵を阻害して膨らみにくくなってしまうのです。
これははちみつだから、ということではなく砂糖が20%を超えても同じような結果になります。
糖分が多いと浸透圧の関係で膨らみにくいのです

ではこのまま3つのパンを分割・ベンチタイム→成形と進み二次発酵をしてみましょう。
二次発酵
砂糖10%・はちみつ12.5%・はちみつ25%のパンの二次発酵をした結果は次の通りです。

一次発酵の膨らみ具合と同じように、砂糖10%、はちみつ12.5%のパンは二次発酵も十分に膨らみましたが、はちみつ25%のパンは膨らみが悪いです。

はちみつが多いと膨らみにくいんですね
このまま焼いてみましょう。
焼成
砂糖10%・はちみつ12.5%・はちみつ25%のパンの焼成した結果は次の通りです。


はちみつ25%はあまり膨らんでませんね~
そうですね、はちみつ12.5%のパンは砂糖10%と比べて同じように膨らんでいますが、はちみつ25%のパンはあまり膨らみませんでした。
実験結果からはちみつのパンが膨らまない原因の考察
これは砂糖が多いパンが膨らまないのと同じで浸透圧の関係でイーストの働きが鈍ってしまったためです。
はちみつパンが膨らまない、と悩まれている方はこの「はちみつの配合が多すぎる」のが原因だということがわかります。

はちみつ25%を入れて膨らませる方法はありますか?
はちみつの多い配合で作りたい場合もありますものね。
では次に、はちみつパンを膨らませる対処法についてお伝えします。
はちみつのパンが膨らまない対処法
はちみつパンを膨らませる対処法は次の通りです。
- 耐糖性イーストを使う
- 発酵時間を延長する

耐糖性イーストって何ですか?
耐糖性イーストとは、糖分をゆっくり分解して発酵に必要な養分を持続的に供給できるイーストを言います。
はちみつは糖分がすでに分解されているので理論的には耐糖性イーストを使っても膨らみは変わらないのですが、一応この耐糖性イーストを使ってはちみつ25%のパンを焼く実験をしてみましょう。
はちみつ25%のパンを耐糖性イーストと低糖性イーストで比較実験~レシピの配合
はちみつ20%のパンは次の配合で焼いてみます。
砂糖20%・ 耐糖性イースト | はちみつ25%・ 耐糖性イースト | はちみつ25%・ 低糖性イースト | |
強力粉 | 100 | 100 | 100 |
低糖性イースト | 0 | 0 | 1.2 |
耐糖性イースト | 1.2 | 1.2 | 0 |
塩 | 2 | 2 | 2 |
砂糖 | 20 | 0 | 0 |
はちみつ | 0 | 25 | 25 |
水 | 67 | 67-25×20%=62 | 67-25×20%=62 |
無塩バター | 7 | 7 | 7 |
低糖性イーストは皆様がいつも普通に使っているイーストのことですよ。
一次発酵
はちみつ25%のパンを、耐糖性イーストと低糖性イーストで作った結果、一次発酵は次の通りになりました。

はちみつ25%のパンの一次発酵は耐糖性イーストも低糖性イーストも両方ともが、砂糖20%で作ったパンよりも膨らむスピードがかなりゆっくりでした。
なので、適度に発酵するまで一次発酵の発酵時間を30分延長しました。
比べてみると、はちみつ25%で耐糖性イーストを使ったものが若干高さが低いです。
耐糖性イーストは発酵の初めは発酵のスピードが遅いですよ

ではこの生地を上からのぞいてみましょう。

上から見るとパン生地がどれくらい緩んでいるのかがよくわかるのですが砂糖の生地が一番緩んで大きく広がっています。
この画像から、20%の砂糖のパンよりも25%のはちみつパンの方が膨らみにくいことがわかります。
ではこのまま分割・ベンチタイム→成形と進み、二次発酵に入りましょう。
二次発酵
はちみつ25%のパンを耐糖性イーストと低糖性イーストで比べて二次発酵をした結果は次の通りです。

どのパンも糖分が20%入っているので発酵が遅くなかなか発酵せず、発酵時間を40分ほど延長してやっとこの高さになりました。
発酵を延長してみると、はちみつ25%で耐糖性イーストを使ったものがほぼ砂糖20%のパンと同じくらいの高さに発酵しました。
ではこのまま焼いてみましょう。
焼成
はちみつ25%のパンを耐糖性イーストと低糖性イーストで比べて焼いてみた結果は次の通りです。

はちみつ25%のパンは、耐糖性イーストの方が低糖性イーストよりも良く膨らんで砂糖のパンと同じくらいの高さに焼き上がりました。
実験結果からはちみつパンが膨らまない時の対処法を考察
以上の実験から、理論的にははちみつ高配合のパンは耐糖性イーストを使ってもその効果は無いという見解もありますが、実際には耐糖性イーストを使った方がよく膨らみます。
3回同じ実験をして3回とも同じ結果です

これは、耐糖性イーストは糖分の多いパンを効果的に膨らませるだけでなく、糖分の多いパン生地をちょうどよい状態に張らせる効果があるため、パンの発酵のガスがたまりやすい生地になり結果的にパンが良く膨らむからです。
結論として
- 12.5%のはちみつパン・・・砂糖と同じように膨らむ
- 25%のはちみつパン・・・耐糖性イーストを使い発酵延長してじっくり時間を掛ければ膨らむ
はちみつ入りのパンは膨らみます
はちみつのパンが膨らまない原因と対処法についてご説明をしてきました。
はちみつの配合が多すぎると膨らみにくいです

はちみつのベーカーズ%を10%くらいに抑えれば、特に対処法を施さなくても普通に膨らむのです。
もしはちみつをたくさん入れたい場合は、次の対処法を両方とも施しましょう。
- 耐糖性イーストを使う
- 発酵時間を延長する
はちみつパンはコクがあって美味しいので、是非チャレンジしてくださいね。
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