こちらの記事ではパン作りにおけるモルトの役割についてお伝えします。
レシピにモルトの記載があっても家にモルトが無いときは、何か代用できるものがあるのか、あるいはモルトを入れずパンを作ってもよいのか、と考えますよね。
モルトってなんのために入れるんですか?
そうですよね、「モルト」という言葉は聞いたことがあっても一般のご家庭には無いものですし、レシピの記載も微量なのでこんな少量のものにどんな役割があるの?と思いますよね。
そこでモルトの説明をするとともに効果が一目でわかるように、モルト有のパンとモルト無のパンを実際に焼いて比較する実験をしてみました。
パン作り27年パン教室を主宰して17年の私が、パンを焼いた実験結果の報告と共にパン作りにおけるモルトの役割は何なのか、またモルトの代用品はあるか、モルトを入れる分量等についてわかりやすくご説明しますね。
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パン作りにおけるモルトの役割
パン作りにおけるモルトの役割は次の3つです。
パン作りにおけるモルトの役割は次の通りになります。
パン生地の伸展性をよくする
パン作りにおけるモルトの役割の一つ目はパン生地の伸展性をよくする、です。
モルトのなかにある「アミラーゼ」という酵素が小麦粉にあるでんぷんを分解して、その時にパン生地の柔軟性や伸展性が良くなります。
パン生地の伸展性が良くなるとパン生地は発酵時や焼成時に膨らみやすくなり、結果的にボリュームのあるパンに仕上がります。
じゃあ、モルトをたくさん入れちゃおうかな!
モルトを入れ過ぎるとパン生地がベタベタになって逆効果です
製パンにおけるモルトにはパン生地の伸展性をよくなりボリュームのあるパンになる効果があります。
パン生地の発酵を促進する
パン作りにおけるモルトの役割の二つ目はパン生地の発酵を促進する、です。
発酵を促進する砂糖と同じ感じですか?
そう感じるのも無理はありませんが、モルトは糖ではありません。
モルトのなかにある「アミラーゼ」という酵素が小麦粉内のでんぷんを分解して麦芽糖を作り、この麦芽糖がイーストのエサの素となって発酵を促進させるのです。
そしてモルトはパン生地がオーブンの中で焼き固まる瞬間までイーストのエサとなる糖を作りだしてくれるので、発酵の工程を終えてもオーブンの中でパン生地が60℃になるまでパンが膨らみ続けます。
なのでモルトを入れたパンは釜伸びが良いですよ
モルトの発酵を促進する役割により、ボリュームのあるパンが焼けるのです。
パンの焼き色をよくする
パン作りにおけるモルトの役割の三つ目はパンの焼き色をよくする、です。
パンやお菓子などにこんがりと美味しそうな焼き色が付くメイラード反応という言葉を一度は耳にしたことがあるかと思います。
このメイラード反応には糖が必要です
モルトを入れると、でんぷんを分解してパン生地に麦芽糖を供給し続けてくれます。
この麦芽糖は発酵の段階ですべて使い切るわけではなく、焼成時に生地の中に残った糖がメイラード反応を強く起こしてパンに綺麗な焼き色が付くのです。
パン作りでモルトを入れるとパンの焼き色が良くなる効果があります。
パン作りにおけるモルトの代用品はあるか?
ではパン作りにおいてモルトは他のものに代用できるのでしょうか?
糖を供給するなら、砂糖を入れればいいんじゃないですか?
モルトの代用として砂糖やはちみつとはよく言われていますが、実はそれらはモルトの代用にはなりません。
確かにモルトにも砂糖やはちみつにも発酵を促進する効果はあります。
が、砂糖やはちみつは発酵の段階で糖を使い果たし、焼成の段階ではほとんどなくなってしまいメイラード反応の役にはあまり立ちません。
けれどモルトは小麦のでんぷんを分解して糖を作り続けるので、パンが焼き固まるまでオーブンの中でも糖をパン生地に供給でき、結果としてメイラード反応が強く起きて綺麗な焼き色が付くのです。
モルトに代用できるものは無いのです
また、モルトの代用として無理やり砂糖を使うと、ハード系のように甘くしたくないパンが甘くなってしまう、という難点があります。
製パンのモルトの使用量
モルトはどれくらい入れればよいですか?
モルトにはシロップタイプと粉末タイプのものがありそれぞれ量も使い方も違い、次の通りです。
使用量の目安 | 使い方 | |
モルトパウダー | 小麦粉の重量の0.5% | 仕込み水に溶かす |
モルトシロップ | 小麦粉の重量の0.05~0.3% | 小麦粉に混ぜる |
シロップもパウダーも効果は同じです
ご家庭ではパウダーの方が保存性もよいし計量もしやすいのでパウダーをおすすめします。
モルトの有無を比較する実験
モルトの効果を調べるために、モルト有のパンとモルト無のパンを実際に焼いて比較検証してみました。
モルトのパン焼き実験 ~ 配合レシピ ~
その時のレシピの配合は次の通りです。
(単位:ベーカーズ%)
モルト無パン | モルト有パン | |
小麦粉 | 100 | 100 |
イースト | 1 | 1 |
モルトパウダー | 0 | 0.5 |
塩 | 2 | 2 |
水 | 67 | 67 |
モルトを入れるパンはハード系のパンが多いので配合はバゲットのものですが、今回は比較がよくわかるように食パン型に入れて焼いてみます。
モルトのパン焼き実験 ~ 一次発酵 ~
まず一次発酵を一時間した結果、次のような状態になりました。
パン生地の高さに違いはあまりないように見えるのですが、よく見ると「モルト有」の方はタッパーの側面にパン生地が触れていてタッパーの中で「モルト無」より大きく膨らんでいるのがわかります。
あまり差が無い気もするけど・・・
YUKAさん、実験は始まったばかりですよ。
このあと、分割→丸め→成形と進み二次発酵の工程に入りましょう。
モルトのパン焼き実験 ~ 二次発酵 ~
そして二次発酵を1時間30分した結果、次のような状態になりました。
明らかにモルト有のパン生地の方が膨らんでいます。
本当だ!けっこう差がでてきましたね
モルトに発酵促進の効果があるとわかります。
モルトのパン焼き実験 ~ 焼成 ~
そして焼成の結果は次の通りです。
モルト無のパンはモルト有のパンに比べて明らかにパンのボリュームは無いし、焼き色も付いていません。
この実験でモルトには次の3つの役割がある、と証明されました。
レシピにモルトが有ったら省略しないことにします!
そうですね、レシピを組み立てた方にはこう焼いて欲しい、という考えがあるのでそれに従った方が良いパンが焼けると思います。
モルトとは何か?
では最後にモルトとは何かを理論的に説明しますね。ここは知らなくてもよいところなのでまとめに飛んでもも大丈夫ですよ。
モルトシロップとは 大麦を煮出して抽出した麦芽糖の濃縮液エキスをいいます。
モルトパウダーはモルトシロップと製法が違い、乾燥させた麦芽を砕いてから精製したものです。
エキスでもパウダーでもモルトの役割は変わらず、モルトの中のアミラーゼという酵素が小麦粉内のでんぷんを分解して麦芽糖を作りだします。
下の図の黄色のマーカーのところね
レシピにモルトがある時、モルトを入れないとパンはできませんか?
「発酵を促進させる」ためにこのモルトをパン作りで使いますが、モルトは入れなくてもパンは作れます。
それはモルトの中だけでなく、小麦粉にも「アミラーゼ」が含まれているためです。
ただ小麦粉に含まれているアミラーゼは量が少ないのでそれを補うためにモルトが使われます。
よって、モルトを入れないパンはモルトを入れたパンに比べて次の特徴があります。
- 発酵が遅い
- パンの色付きが悪い
モルトの効果を知ると省略はできなくなります
製パンにおけるモルト役割についてご説明をしてきました。
パン作りにおいてモルトの役割は次の3つです。
実際にモルト無パンとモルト有パンを焼いて比較した結果焼き上がったパンはこのような状態です。
モルトの有無でこれほど差が付くのですから、やはりレシピにモルトの記載がある時は省略せずにレシピの分量を入れましょう。
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