こちらは、砂糖が多いパンが膨らまない原因と対処法についてご説明する記事です。
砂糖たっぷりのパンを作ったら膨らまないんです
そうなんですよね、砂糖がある割合を超えるとパンが膨らみにくくなくなります。
でも、そんな時でも対処法がありますので、適切な対処で砂糖の多い美味しいパンを焼きましょう。
パン作り歴27年パン教室を主宰して17年の講師の私が砂糖の多いパンが膨らまない原因と対処法について、パン作り初心者の方に向けてわかりやすくご説明しますね。
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砂糖の多いパンが膨らまない原因
砂糖の多いパンが膨らまない原因は次の2つです。
砂糖の多いパンが膨らまない原因は次の通りです。
イーストの働きが鈍る
砂糖の多いパンが膨らまない原因の一つ目はイーストの働きが鈍る、です。
イーストは砂糖が多すぎると浸透圧の関係で、イーストから水分が出てしまってイーストの働きが鈍くなってしまいます。
浸透圧って聞いたことあるけど・・・なぜイーストの元気がなくなるの?
野菜に塩を振ると、野菜から水が出てクタッとするでしょう?あれが浸透圧によって水分が出てしまう、わかりやすい例です。
砂糖も塩と同じく浸透圧が作用します。
イーストは適度な量の砂糖でしたら発酵のエサになるのですが、適量を超えると浸透圧が働いてイーストから水分がでてしまってイーストの働きが鈍ってしまいます。
イーストに水分があるんですか?
イーストの成分の70%は水分、残りの30%はタンパク質・炭水化物・脂質等なんです。
ドライイーストでも砂糖が多いと浸透圧の関係でイーストの働きが鈍くなってしまいます。
グルテンの形成が阻害される
砂糖の多いパンが膨らまない原因の二つ目はグルテンの形成が阻害される、です。
グルテンは、小麦粉の中のタンパクの成分のグルテニンとグリアジンが水とくっついて形成されます。
確か、こねるとグルテンができるんですよね
そうですね、小麦粉と水を合わせてこねたり、時間を置いたりするだけでもグルテンはできますよ。
このグルテンの形成に必要なものは小麦粉と水だけなです。
なのでグルテンの形成、ということだけを考えるとパンの材料として入れる塩・砂糖・バターなど小麦粉と水以外のものすべてが邪魔なものになります。
したがって、適量の砂糖の場合でしたら何とかなりますが、砂糖が多いとグルテンの形成が阻害されてグルテン量が少ないのでパンが膨らまなくなってしまうのです。
砂糖の多いパンが膨らまない時の対処法
砂糖の多いパンが膨らまない時の対処法は次の3つです。
砂糖の多いパンが膨らまない時の対処法は次の通りになります。
耐糖性イーストを使う
砂糖の多いパンが膨らまない時の対処法の一つ目は耐糖性イーストを使うです。
耐糖性イーストとは多くの砂糖の入ったパンでもしっかり発酵するイーストを言います。
この耐糖性イーストはショ糖(砂糖の主成分)を分解するスピードが遅いので砂糖がなかなかブドウ糖や果糖になりません。そうなると浸透圧が緩やかで上昇が少なく、イーストから水分が失われにくくイーストの働きが阻害されないのです。
じゃあ、いつでも耐糖性イーストを使えばいいじゃないですか?
普通のイーストが使えるのは糖分が0~12%、耐糖性イーストは糖分が5%以上、となっていますので5%未満の時に使うと逆に膨らみにくいです。
適正な糖の比率% | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12%~ | |||
普通のイースト | 〇 | × | ||||||||||||||
耐糖性イースト | × | 〇 |
適材適所でお願いします
耐糖性イーストはサフから発売されています。
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発酵に時間をかける
砂糖の多いパンが膨らまない時の対処法の二つ目は発酵に時間をかけるです。
砂糖の多いパンはイーストの働きが鈍って、なおかつグルテンの量が少ないので発酵に時間がかかります。
なので発酵に時間をかけてパンが膨らむのをじっくり待つと良いですね。
時間をかけることでパンの膨らみが100%良くなるわけではありませんがある程度は是正できます。
イーストの量を増やす
砂糖の多いパンが膨らまない時の対処法の三つ目はイーストの量を増やすです。
砂糖の配合が高くパンが膨らまなかった場合は、次回以降にそのパンを焼くときはイーストの量を少しだけ増やしてみましょう。
どれくらい増やせばよいですか?
イーストが多すぎると弊害もありますので、イーストのベ―カーズ%(粉に対する割合)を2.5%を上限とするとよいですね。
これ以上増やすとイースト臭がする味の悪いパンになってしまいますし、またイーストのエサとなる糖分もより多く必要なのでせっかく入れた砂糖がイーストのエサとなってなくなり、甘味が薄れてしまいます。
パン作りにおける砂糖の役割
このようにパンが膨らんだり膨らまなかったり、パンの膨らみに大きな影響を及ぼす砂糖がパン作りにおいてどのような役割があるかを見てみましょう。
パン作りにおける砂糖の役割は次の6つです。
パン作りにおける砂糖の役割は次の通りになります。
パンに甘味を付ける
パン作りにおける砂糖の役割の一つ目はパンに甘味を付ける、です。
砂糖を入れることによって当然ながらパンが甘くなります。
あんぱん、クリームパン、メロンパン等いわゆる菓子パンと呼ばれるパンは具材やトッピングに合わせて適切な甘みをパン生地に付けることによってより美味しいパンに仕上がるのです。
発酵を助ける
パン作りにおける砂糖の役割の二つ目は発酵を助ける、です。
イーストは発酵する際に、糖分をエサとして炭酸ガスと発生させてパンを膨らませます。
このエサとなる糖分は、砂糖に含まれるブドウ糖や果糖、そして小麦粉に含まれる麦芽糖(分解してブドウ糖になる)なのです。
よって砂糖はイーストによる発酵を助けパンを膨らませる役割があります。
焼き色をよくする
パン作りにおける砂糖の役割の三つ目は焼き色をよくする、です。
パンは焼きあがると美味しそうな茶色の焼き色が付いて香ばしい香りがしますよね。
これはメイラード反応によるものです。
メイラード反応・・・聞いたことはあります
食品の中に含まれる次の2つの物質が加熱されて結びついて化学反応が起きるのですがそれをメイラード反応と言います
- アミノ化合物(小麦粉・卵・牛乳・ヨーグルトなどに含まれる)
- 還元糖(砂糖に含まれるブドウ糖・果糖など)
このメイラード反応によって、パンに茶色い焼き色と香ばしい風味が付きより美味しいパンになります。
また、砂糖のカラメル化も焼き色が濃くなる理由のひとつです。
歯切れをよくする
パン作りにおける砂糖の役割の四つ目は歯切れをよくする、です。
パンのグルテンは、砂糖を入れれば入れるほどつながりが断ち切られてしまいます。
なぜグルテンが切れちゃうんですか?
グルテンは本来小麦粉と水があれば作れるので、パンの材料であってもその二つ以外のものは基本グルテンにとっては邪魔なものなのです。
よって砂糖が入るとグルテンの形成を邪魔して断ち切られ、パンの引きが弱くなり歯切れがよくなるのです。
例えば食パンのようなパンは、かみちぎったときにぐ~っと繊維が伸びるような引きの強さ、逆の言い方をすると歯切れの悪さが特徴で、それが食パンの良さであり美味しさになります。
ハード系とソフト系のパン生地は全く違いますよ
一方クリームパンやあんパンのようなパンは引きが強くて歯切れが悪いとパンの具材との一体感が失われて美味しく感じません。
よってパンの種類に応じて、引きの強さを出したくないものは砂糖を入れて歯切れをよくするのです。
そうすることでより一層美味しいパンになります。
パンをしっとり焼き上げる
パン作りにおける砂糖の役割の五つ目はパンをしっとり焼き上げる、です。
砂糖には保水性がありますので、パンをオーブンに入れて焼成したときに水分が過剰に蒸発せずしっとりと焼き上がります。
日本人はソフト系のパンはしっとりしたパン生地を好む傾向がありますので、美味しいパンと感じられるのです。
パンの劣化を防ぐ
パン作りにおける砂糖の役割の六つ目はパンの劣化を防ぐ、です。
パンを焼いているときは80℃くらいになるとα化(糊化)して水分を吸収して柔らかくなります。
さらに焼き続けるとパン生地から余分な水蒸気が出ていって外皮も内層も固まるのです。
この焼きたてのパンを放置すると水分がどんどん失われて固くなってしまいます。
これをβ化とか老化といいます
老化したパンはパサパサでカチカチで美味しく食べられないので、できることなら老化は防ぎたいものですよね。
その老化を防ぐために有効なのが水和性のある砂糖を入れることです。
砂糖を入れることで、しっとりした食感が翌日も続きます。
ハード系のパンがより早く固くなってしまうのは砂糖が入っていないのも一つの原因です。
砂糖が多すぎるとパンはどうなるか
砂糖がパン作りに与える効果はありますが、この砂糖の配合が多すぎた場合どうなるのでしょうか。
次の4点の弊害があります。
焼き上がったパンのボリュームが出ない
この焼き上がったパンのボリュームが出ない、というのは今回の「膨らまない」に集約されますが、具体的にはパンが上に伸びずなんとなく横に広がったような感じになります。
これは多すぎる砂糖によってグルテンの形成が阻害されて、パンが上に伸びるための骨格ができなかったため、そしてイーストの働きが鈍って十分に発酵できなかったためです。
こねているときパンがべた付く
砂糖の配合が多すぎるとグルテンの形成が阻害されるので、ベタベタしてまとまりにくくパン生地がべた付く感じが長く続きます。
なかなか発酵しない
砂糖の配合が多いとイーストの発酵が阻害されるため、なかなか発酵してきません。
発酵時間を延長したり、イーストを増やす、耐糖性イーストを使う等工夫が必要です。
焦げやすい
砂糖の配合が多いパンは焼成時に焦げやすくなります。
これは砂糖によるメイラード反応が強く出るためです。
砂糖の多いパンを焼くときは耐糖性イーストを使いましょう
砂糖の多いパンを焼くときはパンが膨らみにくくなります。
その原因は次の2つです。
- イーストの働きが鈍る
- グルテンの形成が阻害される
そしてこの原因を理解したうえでパンを膨らませる対処法は次の3つがあります。
- 耐糖性イーストを使う
- 発酵に時間をかける
- イーストの量を増やす
一番のおすすめは耐糖性イーストを使う、です
ただ耐糖性イーストは糖分が5%以上から使用、と制限がありますので5%未満の時は低糖性イーストを使いましょう。
このように砂糖の多いパンは膨らみにくいのですが対処法がありますので、きちんと対処して美味しいパンを焼きましょう。
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