こちらは、レーズンパンが膨らまない原因と対処法について説明する記事です。

レーズンパンが膨らまなくて困ってます。
そうですよね、シンプルな食パンに比べてレーズンパンは膨らまないという経験を私もしていますよ。
でも原因を探って、適切な対処をすればレーズンパンもちゃんと膨らむんです。
パン作り歴27年パン教室を主宰して16年の講師の私が、レーズンパンが膨らまない原因と対処法についてお伝えします。
たった今、レーズンパンを作っていて膨らまずに焦っている方はを「まとめ」をご覧ください→まとめ
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レーズンパンが膨らまない原因

レーズンパンが膨らまない原因は次の4点が考えられます。
レーズンパンが膨らまない原因は次の通りです。
レーズンがグルテンの形成を阻害する

レーズンパンが膨らまない原因の一つ目はレーズンがグルテンの形成を阻害するためです。
パン作りでは小麦粉と水を合わせてこねる工程でグルテンが作られます。

グルテンは細かい網目のような構造になっていて、このグルテン膜が発酵で発生した炭酸ガスを包み込んでパンが膨らむのです。
イメージは風船が膨らむ感じね

ところが、パンをこねる時にレーズンを入れるとこのレーズンがグルテン膜にぶつかって膜に穴があいてしまうのです。

そうすると発酵によって発生した炭酸ガスがその穴から漏れ出てしまってパンが膨らまなくなってしまいます。


穴があかない方法は無いんですか?
後に対処法でも説明しますが、レーズンの入れるタイミングによっては穴があかない、または穴があきにくい方法がありますよ。
レーズンの含有量が多すぎる

レーズンパンが膨らまない原因の二つ目はレーズンの含入量が多すぎる、です。
レーズンパンに入れるレーズンの量が適切である時はパンは膨らみますが、レーズンの含有量が多すぎる場合はパンが膨らまずズッシリした食感になります。

私はそのズッシリ感も好きですけど
レーズンの含有量が多いとグルテン膜にあく穴の数が多くなるので、結果的にその穴から漏れ出る炭酸ガスが多くなりパンが膨らみにくくなるのです。
ラム酒が発酵を抑制する

レーズンパンが膨らまない原因の三つ目はラム酒が発酵を抑制する、です。
レーズンをパンに入れる時は、一度湯通しをしたレーズンかラム酒等のアルコールに漬けたレーズンを使います。

なぜ湯通しをするんですか?
この湯通しの目的はレーズンにオイルコーティングされているオイルを落とすためです。
またオイルコーティングされていないレーズンでも湯通しをしてパンに適度な水分を与え、レーズンがパンの水分を奪い取ってしまわないようにする意味合いもあります。
湯通ししたレーズンは良いのですが、ラム酒等のアルコールに漬けこんだレーズンを使う場合はこのレーズンに含まれたアルコールの成分が発酵を妨げてしまいます。
よってラム酒漬けのレーズンを使うと、お味はよいのですがレーズンパンが膨らみにくくなくなってしまうのです。
タンパク質の少ない小麦粉を使っている

レーズンパンが膨らまない原因の四つ目はタンパク質の少ない小麦粉を使っている、です。
パンをこねると、小麦粉に含まれているグルテニンとグリアジンというタンパク質が水とくっついてグルテンが作りだされます。
タンパク質が少ない小麦粉はグルテンも少ないです

なので小麦粉に含まれるタンパク質量が少ないとパンの膨らみが悪くなります。
一般的に国産小麦粉はタンパク質量が少なく、外国産小麦粉はタンパク質が多いです。
そのため国産小麦を使ってレーズンパンを作る場合はグルテンが少なくなり膨らみにくくなります。
膨らむレーズンパンを作るための対処法

では膨らむレーズンパンを作る時はどうしたらよいのでしょうか。
その対処法は次の8つです。

今二次発酵中のレーズンパンが膨らんでいないんです!
その時は「発酵時間を延長する」対処法をご覧くださいね。
レーズンパンが膨らまない時の対処法は次の通りです。
発酵時間を延長する
膨らむレーズンパンを作るための対処法の一つ目は発酵時間を延長するです。
この対処法が最も簡単で、すべての原因に対処できる方法でもあります。

どうやって発酵時間を延長すればいいんですか?
これくらい膨らんでくるはず、というところまでただ発酵の時間を延長すればよいだけですよ。
膨らまないパンの多くは発酵時間を延長すればある程度是正されます。
実際に発酵延長をするとどれくらい膨らむのか実験をしてみましたのでそちらをご覧ください。
レーズンを成形の時に入れる

膨らむレーズンパンを作るための対処法の二つ目はレーズンを成形の時に入れるです。
レーズンパンは、生地をこねているときにレーズンがパン生地にぶつかってグルテン膜に穴が開いて、炭酸ガスが漏れ出て膨らまなくなります。
なので、レーズンをこねの段階で投入しなければ、グルテン膜が破れることなくパンは膨らみやすくなります。

じゃあレーズンはいつ入れればよいのですか?
成形の時にレーズンを入れれば、レーズンがグルテン膜を傷つけてしまうことはありません。
レーズンをニーディングの時に入れたい時は最後に入れる
膨らむレーズンパンを作るための対処法の三つ目は、レーズンをニーディングの時に入れたい時は最後に入れるです。
成形時にレーズンを入れるとレーズンパンは膨らみやすくなりますが、ニーディングの時にレーズンを混入したほうがレーズンパンとしてのお味は圧倒的に良くなります。
なのでニーディングの時にレーズンを入れたい時は、レーズンは最初から入れずグルテンが出来上がってからレーズンを入れましょう。

それはいつですか?
パン生地がこね上がる2,3分前にレーズンを投入するのが良いですね。
レーズンの含有量を20%以下にする

膨らむレーズンパンを作るための対処法の四つ目はレーズンの含有量を20%以下にするです。
レーズンパンに入れるレーズンの量が多すぎると、パン生地をこねる時にレーズンがグルテン膜を傷つける穴が多くなって膨らまなくなってしまいます。
レーズンの含有量を20% くらいの分量にすれば、レーズンが多すぎる時より膨らむのです。
レーズンをラム酒に漬けない

膨らむレーズンパンを作るための対処法の五つ目はレーズンをラム酒に漬けない、です。
ラム酒等のアルコール成分がイーストの発酵を阻害してしまうのでラムレーズンは使わず、普通のレーズンを湯通しして使うと良いですね。

ラムレーズンのパンも捨てがたい・・・
そんな時はラム酒と水半々を合わせたものにレーズンを漬け込みましょう。
ラム酒100%のものより幾分発酵の阻害は緩和されて、レーズンパンが膨らむようになります。

タンパク質が多い小麦粉を使う

膨らむレーズンパンを作るための対処法の六つ目はタンパク質が多い小麦粉を使うです。
国産小麦はタンパク質が少ないです

そのおかげでモチモチした食感になりその食感が好きな方には良いのですが、ふっくらと膨らむレーズンパンを作る場合はタンパク質の含有量が多い小麦粉を使うと良いですね。
中種法でレーズンパンを作る

膨らむレーズンパンを作るための対処法の七つ目は中種法でレーズンパンを作るです。
全ての材料を一度にこねて発酵をして焼く、という工程で行う方法を「ストレート法」と言います。
これに対して「中種法」は例えば粉70%と水60%を合わせて一回目のこねを行い数時間発酵させて「中種」を作ります。
その後、この「中種」と油脂を除く残りの他の材料を加えこね、少しこねたらバター等の油脂を入れ二回目のこね(本ごね)を行いその後の工程をするのです。
こねと発酵を2回繰り返す感じです

中種法には次のメリットがあります。
- パンがよく膨らんでボリュームが出る
- パンが柔らかく仕上がる
- 本ごねと一次発酵の時間が短く済む
デメリットとしては、中種を発酵する時間が短いと小麦粉の旨味が少なくなってしまいます。
小麦の旨味は若干薄れてもレーズンのお味があるので許容できる範囲です。
レーズンパンは膨らみにくいのでよく膨らむというのメリットを求めて、中種法が適しています。

中種法はなぜよく膨らむんですか?
パンは「こねる」そして「時間を置く」ことによってグルテンが作られます。
中種を長時間発酵させ小麦と水が良く混ざり(水和)あってグルテンが形成されるのです。
と同時にこねの工程が2回あるのでより強いグルテンになり中種法で作るパンはよく膨らみます。
一次発酵の時にパンチをする
膨らむレーズンパンを作るための対処法の八つ目は一次発酵のときにパンチをする、です。
パンチをすると、パンにボリュームが出やすくなります。
レーズンパンをしっかり膨らませたい時は一次発酵の途中でパンチをしてから再び一次発酵の続きをしましょう。
レーズンパンが膨らまない時の対処法~発酵時間を延長する実証実験
レーズンパンが膨らまない時の対処法として、発酵時間を延長する、ということがありますが、実際にどれくらい膨らみが是正されるのか実際にパンを焼いて実験してみました。
配合
実験に際して用意したパン生地は次のレシピで作っています。
材料 | ベーカーズ% |
強力粉 | 100 |
イースト | 1.2 |
塩 | 2 |
砂糖 | 7 |
水 | 67 |
無塩バター | 7 |
レーズン | 40 |
一次発酵
レーズン40%の生地の一次発酵は次のような結果になりました。
左端の白生地は、レーズンを成形時に入れる予定のもので一次発酵の段階ではレーズンが入っていません。
レーズンが入っている生地は発酵延長をするものとしないものの差を見るために同じ生地を2つに分けました。

レーズン生地は白生地と同じくらいの高さまで一次発酵は進みましたが、白生地に比べるとタッパー全体には生地が広がっておらず生地が少し硬い感じがします。
でもフィンガーテストはOKでしたので、このまま分割・ベンチ→成形へと進みます。

一次発酵は大丈夫ですね
そうですね、白生地があるのでよく比較できますね。
ではこの白生地にはこんな感じで↓成形の時にレーズンを後入れしていきましょう。

二次発酵
レーズン40%の生地の二次発酵は次のような結果になりました。

二次発酵になりましたらぐっと差が付きました。
成形時にレーズンを後入れしたパン生地はニーディングの時にレーズンでパン生地が傷ついていないので順調に発酵が進んでいます。
が、ニーディングの時にレーズン一緒に練り込んだものはグルテン膜に穴が開いている部分があるので、なかなか発酵しません。
真ん中の生地は発酵時間を延長する調整をせず、レーズン後入れのパンと同時に焼成します。
右側の生地は、発酵時間を延長してから焼成しましょう。
焼成
レーズン40%の生地の焼成は次のような結果になりました。


発酵時間の延長は効果があるんですね!
ただ、発酵時間の延長は効果にある程度の限界があることと、逆に過発酵になる危険性があることに気を付けなければなりません。
ではこのパンをカットしてみますね。

発酵時間を延長したものは、レーズンを後入れしパンと同じくらい膨らみましたが、発酵時間を延長していないものは小ぶりです。

レーズン後入れもいい感じですね
レーズンの後入れですと発酵延長をしなくてもパンは順調に膨らみます。
でもパン生地にレーズンの旨味が混ざりこんでいないので、ニーディングの時にレーズンを混ぜ込んで発酵時間を延長する方が、お味は圧倒的に美味しいですよ。
レーズンパンを膨らませるには発酵時間を延長しましょう
レーズンパンは膨らみにくいものですが、その原因は明白なので対処法を施して膨らむレーズンパンを焼けますよ。
レーズンパンが膨らまない原因と対処法は次の通りです。
レーズンパンが膨らまない原因 | 対処法 | |||
パン生地をこねる前の対処法 | 今レーズンパンを作っている最中の対処法 | |||
レーズンがグルテンの形成を阻害する | ②成形時にレーズンを入れる | ⑦中種法でレーズンパンを作る | ⑧一次発酵の時にパンチをする | ①発酵時間を延長する |
③ニーディングの最後にレーズンを入れる | ||||
レーズンの含有量が多すぎる | ④レーズンの含有量を20%以下にする | |||
ラム酒が発酵を阻害する | ⑤ラムレーズンを使わず、湯通ししたレーズンを使う | |||
タンパク質の少ない小麦粉を使っている | ⑥タンパク質の多い小麦粉を使う |
次の3つはすべての原因に対して効果がある対処法です。
- 発酵時間を延長する
- 中種法でレーズンパンを作る
- 一次発酵の時にパンチをする

発酵延長は簡単ですね!
そうですね、レシピの時間に囚われずにレーズンパンが膨らむまで待てばいいだけですからね。
発酵時間の延長はこれからレーズンパンを作ろうとする人だけでなく、現在レーズンパンを作っていて膨らまずに困っている方が唯一とれる方法でもありますよ。
ただこの時に気を付けなければいけないのは膨らみに限界があるということと、過発酵になる危険性があることです。
レーズンパンの特性を知って、よく膨らむレーズンパンを焼いてくださいね。
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